VRとは?VRの基本とビジネスにおける活用
―VR会議導入の実際―
ここ数年、働き方改革や新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、リモートワークが進み、それに伴ってWeb会議など遠隔のコミュニケーションも増えました。
一方で、対面でのコミュニケーションと比較して、意思疎通が不十分になったり、心理的な距離ができたりするなど、デメリットも指摘されています。
そのような中で、新たなコミュニケーション・体験の方法として、VR技術が注目されています。
今回のコラムでは、当社でのVR会議導入の実体験をもとに、VRの基本や企業における活用方法、導入のメリットやデメリットについて、お伝えします。
目次
1. VRとは
VRは、Virtual Realityの略で、仮想現実などと呼ばれています。
総務省「令和3年版 情報通信白書」では、「現実にない世界又は体験し難い状況をCGによって仮想空間上に作り出す技術」とされています。
ゴーグルなどの専用機器を装着すると、360度周囲を映像に囲まれ、仮想空間の中へ自らが入り込んだような没入感が得られることが特徴です。
ARという言葉も耳にされることがあるかもしれませんが、こちらはAugmented Realityの略で、拡張現実などと訳されています。
上記の情報通信白書では、「目の前にある現実世界にコンピューターで作られた映像や画像を重ね合わせ、現実世界を拡張する技術」とされています。
スマートフォンやARグラスなどの端末をかざすと、そこに物体が現れ、現実と重なっているように見えます。家具の購入前に、現実の部屋へ商品を配置したイメージを見るなどということが可能になります。
VR、ARともに普及が進んでおり、今後のソフトウェア・サービス売上高、ハードウェア出荷台数ともに拡大が予想されています。
出典:「令和3年版 情報通信白書」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd105210.html
2. VRを活用したサービスと企業内でのVR活用
VRの活用では、ゲームなどのエンターテインメント分野をイメージされることが多いかもしれませんが、その他にも企業や自治体が提供するサービスで活用されています。
例えば、不動産業界では、実際に物件を訪れる前に、VRを用いて部屋の360度映像を確認することができるサービス、観光業においては、旅先の映像を見ながら観光を疑似体験するできるサービスなどがあります。他にも、小売業で、実店舗の他にバーチャルショップを持つ店も増えています。
一方で、企業内でのVR活用も見られるようになってきています。
経済産業省近畿経済産業局の「ビジネスに効果的なVR/AR/MR活用の手引書・事例集」の中から、VR活用が可能と見られるシーンをいくつかご紹介します。
教育・訓練
接客のオペレーション、機械の操作などの手順を自ら体験しながら理解すること、言葉で伝えにくい技能の伝承や外国人材へのトレーニングに活用できます。
現場に足を運ばずとも、教育・訓練が受けられるといったメリットもあります。
また、工場や建設現場などでの安全教育に用いることもできます。
現場で起こりうるさまざまな事故を実際に経験するのは不可能ですが、危険な状況をVRで体験することによって、安全意識の向上につなげることができます。
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、VRを用いた安全衛生教材が公開されており、
転倒や機械への巻き込まれなどのシチュエーションを体感できるようになっています。
https://www.youtube.com/playlist?list=PL1x5ZyAfDI_U-uNevLM8hsEdD1OFPOQuK
完成イメージのすり合わせ
住宅や商業施設等の建築物の完成イメージをVRで体験し、関係者と共有するためにVRを用います。
認識のずれが後々トラブルを生むことにならないよう、共通の認識をつくるために活用されます。
バーチャル見学
会社や工場の見学では、複数人での見学のため定められた場所しか見られないことが多いですが、VRのコンテンツを用意することで、見学者が自由に見たい場所を見ることができます。
また、会社の雰囲気をつかんでもらったり、立ち入りが難しい場所にも入ることで、より深い体験が得られたりするなどのメリットもあります。
遠隔コミュニケーション
離れた拠点にいる者同士が、VR空間で実際に一つの場所に集まっているような感覚で、コミュニケーションを行うことが可能となります。
先日、ハーバード大学の卒業生がバーチャル同窓会を開き、仮想空間上に約30か国から卒業生が集まったことが話題になりましたが、時間や場所の制約を受けず、さらにWeb会議とは異なったコミュニケーションの機会をつくることができます。
出典:「ビジネスに効果的なVR/AR/MR活用の手引書・事例集」(経済産業省近畿経済産業局)
https://www.kansai.meti.go.jp/3-2sashitsu/vr/xr_tebiki_jirei2.pdf
3. 企業内での活用としてのVR会議の導入
VRの活用方法がわかっていても、社内の業務へ取り入れるためには専用のデバイスが必要でハードルが高い、本当に効果があるのか半信半疑という方もいらっしゃるかと思います。
当社では、以前からWeb会議を行っていましたが、その一部を仮想空間上の会議室で行う「VR会議」としました。
そこで、当社が実際に導入したVR会議について、ご紹介したいと思います。
VR会議の始め方
VR会議は、インターネット環境で、Horizon Workrooms、NEUTRANS、VIVE SyncなどVR会議用のツールを利用して行います。仮想空間上に専用の会議室が用意され、「アバター」と呼ばれる自分の分身を作ることができ、画面共有などさまざまな機能を利用することができます。
機能が制限されているプランでは、無料のことが多いです。
また、VR会議ツールに対応するVRゴーグルやヘッドマウントディスプレイと呼ばれる端末が必要になります。PCからも仮想空間上の会議室に入ることはできますが、その場合は、参加者のアバターが話す映像は見られても、自分がその場にいるようなリアリティは感じられません。
その他、仮想空間上のデスクトップで作業をしたい場合は、対応のキーボードを準備します。
上記の準備が整えば、会議室、リモートデスクトップ、アバターの設定などを行って、利用が可能になります。
VR会議でできること
仮想空間上の会議室でアバターを通して会話ができます。Web会議と同様に個人のデスクトップ画面を共有したり、ホワイトボードに共同で書き込みながらディスカッションをしたりすることができます。
また、会話の内容をテキスト化して表示させたり、それを英訳したりすることができます。
参加者にとっての利便性が強化された環境で、現実空間で会議をする時と同じような感覚で会議を進めることが可能です。
4. VR会議導入でわかったメリットとデメリット
当社が利用しているサービスはHorizon Workrooms(端末はMeta Quest 2)ですが、実際に利用して感じたメリットとデメリットをご紹介します。
メリット
- 口の動きやジェスチャーが実際の動きと連動し、目線が合った状態で話ができるので、コミュニケーションが成立していることを体感しやすい。
- 声の大小による人との距離感が再現され、現実の会議室で話しているかのようなリアリティがある。
- 在宅勤務では視界に余計なものが入りがちだが、閉じられた空間のため集中できる。
- 会議室の場所を都会、海辺、湖畔などに変更ができ、気分転換になる。
- アバターで参加するため、服装、髪型、メイクなどの外見を気にせずに参加できる。
デメリット
- VR会議用のツールは無料でも利用できるが、端末の購入など初期費用がかかる。
- VRゴーグルの重量が約500gあり、長時間の使用ができない。また、使い始めは首の痛みが出ることもある。
- 現実世界との行き来がすぐに出来ない(手元の資料や手帳を少し確認したい時など)
- VR会議用のツールで用意されているカレンダーやTo doリストなどの機能が使いにくい場合もある。
- 眼鏡のサイズによっては装着が出来ず、コンタクトをするなどの手間がかかる。
総じて、Web会議と比較すると、ぐっと対面の会議に近くなり、リラックスして発言しやすくなるなど、コミュニケーションが取りやすく感じました。
なお、1時間程度の利用では、VR空間にいて酔ってしまうなどの不快感はありませんでした。
導入に際しては、自社の会議としてありたい姿を設定した上で、それに合ったツールや端末を選定すること、メリットとデメリットを十分に確認して導入することが必要になるかと思います。
5.まとめ
これまで述べてきた事柄について、まとめると以下の通りになります。
まとめ
- VRは、Virtual Realityの略で、仮想現実を意味する。
- ARは、Augmented Realityの略で、拡張現実を意味する。
- 不動産、観光、小売などVRを活用したサービスの提供が広がっている。
- 企業内でも教育、工場・会社見学、遠隔コミュニケーションなどでVRが活用されている。
- 導入に際しては、自社の会議としてありたい姿を設定した上で、それに合ったツールや端末を選定する。
- メリットとデメリットを十分に確認して導入する
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