データマネジメントとは何か
第2回

データマネジメント

第1回目のコラムでは、データマネジメントの必要性や世界的なフレームワークであるDMBOKについて紹介しました。
第2回目は、より詳しくデータマネジメントの業務について紹介いたします。 

目次

  1. データマネジメントとは 
  2. 実現するためにするべきこと
    (1) データの活用 ~データ活用できる環境を整えること~
    (2) データの収集 ~データの流通経路を最適化すること~
    (3) データの生成 ~データ構造を統一化すること、2次利用を意識した品質定義をすること~
  3. 求められる人材像 
  4. まとめ

1.データマネジメントとは

第1回目のおさらいになりますが、データは企業の第四の資産であると言われています。その資産を管理することは、企業としては至極当然の活動であると言えます。 
ですが、ビッグデータという言葉が登場してからまだ10年足らずしか経っていません。データマネジメントという言葉も一般的とはまだ言えない状況にあります。 
データを管理する・マネジメントするといえども、一体何をしたらよいのか、わからないという現状があると言えます。 
そこで、第2回目はデータマネジメントを行うために何をするべきか?それを実行するために求められる人材像についてお話ししたいと思います。

2.実現するためにするべきこと

データ生成・収集・活用

まず、データマネジメントをすることで目指すことは何でしょうか?
データを適切に管理している…それはすなわち、どういった状況になっていることを指すのでしょうか?
データマネジメントは目的と手段が混在しがちな取り組みです。それを防ぐためには、目的を明確にすることが重要です。
よって、データマネジメントの出発点は、まず「目指す姿」を定義することから始まると言えます。「目指す姿」を定義することは、企業によって異なる課題や要求に対する答えを示すことでもあるからです。
企業によって扱っているデータは様々ですし、そのデータの使い方も異なります。
入手方法としては、多くのデータを自社で生み出しているケースもあれば、購入したりすることで他社から手に入れているケースもあります。
また、保存方法では、データを扱うシステムを保持しているケースと表計算ソフトなどで管理しているケース、紙で保存しているケースなど様々です。
このようにデータにまつわる背景が違うため抱えている課題や理想とする姿も異なります。そのために企業ごとに「目指す姿」を定義することが求められるのです。

データマネジメントの業務を、データを扱う3つの場面、「データの生成」と「データの収集」、「データの活用」に分類し、それぞれの分類の中で何を意識するべきかを解説します。
最終的に目指していく「データの活用」から見ていきたいと思います。

(1) データの活用 ~データ活用できる環境を整えること~

  1. データを適切な人のみがアクセスできる環境である 
  2. データカタログやメタデータ管理でデータが探索できる環境である 
  3. データ活用要件を明らかにする

データ活用できる環境とは何でしょうか? 
それは、データにアクセスできる環境が整備されており、さらに活用したいデータを探索できる環境を指します。データにアクセスできるといっても、適切な人が適切な範囲のデータにアクセスする、ことが求められます。誰でもデータを閲覧できる状況は望ましい環境とは言えません。
そのためにはデータの棚卸しやアクセス権限の検討などが必要です。 
また、データの検索はデータカタログ(データを扱うユーザに見せる目録・辞書を指す)やメタデータ(データそのものを示す付帯情報を指す)を整備することで実現することが多いですが、カタログとして何の情報を管理するか、カタログに登録する情報の収集方法や定義方法など各種検討が必要です。
データカタログのもととなる情報を保持しているか否かは企業によって様々であるため、企業ごとに対処方法は異なり、各社独自で手段を検討することが必要です。 
また、データ活用に必要なデータの要件を明らかにすることも重要です。
データにアクセスできる環境が整備されていても、提供されているデータと自身が欲しいデータが一致しているかどうかを判断するためにも、データ要件は重要な要素になります。

(2) データの収集 ~データの流通経路を最適化すること~

  1. データの流通経路が一本化されている 
  2. オリジナルのデータが間違って上書きされないように管理されている 
  3. 社外データのメタデータを保持し、データの受け渡し元が管理されている

データの収集では、データをやり取りする関所=流通経路を可能な限り一本化することを目指します。
データの流通経路を一本化することで、どこからどこにデータが流れているかを明らかにでき、社内で扱っているデータの全体量がおおよそ把握できるようになり、データの不備などの問題が発生したときに、その影響範囲が把握しやすくなります。 
ただ、社内のシステム間のデータの流通経路の一本化をするためにはシステム導入を要するケースもあるため、費用対効果を確認したうえで実施すべきか否かを判断する必要があります。 
一方、システムではなく他社から受領しているデータを社内で共有したり、部署を跨いだデータを社内で共有したりして、データ活用を進めるケースがあるかと思います。
この場合は、データの流入元が複数あっても社内で保存しているオリジナルデータは一つで、そのオリジナルファイルを管理するフォルダなどに入れる、などのルールを設けて管理することが必要です。
防ぐべきはオリジナルファイルを勝手に上書きすることや、そのファイルのありかがわからなくなることです。 
また、ファイルの生成元(誰からもらったデータか)、当該ファイルの内容、不備があった場合の連絡先、個人情報等を含むか否かなどの情報も社外からのデータ管理のために必要です。
社外から受領したデータを適切に管理し、流通させるためにも流通経路を一つにまとめていくことを推奨します。

(3) データの生成 ~データ構造を統一化すること、2次利用を意識した品質定義をすること~

  1. データの構造を統一化する 
  2. データの品質に影響する業務であることを意識する

データの生成では、データを生成する社内システムのデータ構造を統一化すること、そしてデータの品質を意識することが必要です。
業務におけるシステムの利用=自身の業務を遂行することだけを目標としていると、データの品質低下を招く恐れがあります。それは、データ活用(分析)において必要とされるデータが業務上は不必要である(あるいは必要性が低い)ために、正確に(真面目に)登録されないことがあるためです。
データ活用を推進するためにも、データの生成部分でいかに生成できるかによって、影響は大きく変わってきます。 
データの構造を統一化することは、データの品質低下を防ぐことと同じように、データ活用推進のために必要な要素です。それぞれのシステムで個別にデータの構造を設計すると、データの粒度やデータの保持する項目の違いによって、データの結合がしやすい/できないなど、データ活用の状況が変わります。
よって、可能な限りデータの構造を統一化していくことを目指すことを推奨しています。 

3. 求められる人材像

  1. データに精通している 
  2. 正確にルールを守って実行できる 
  3. 落としどころを見つけ調整できる

データマネジメントに求められる人材像は、データに精通しており且つ正確にルールを守って実行ができる人物です。データ活用が多くの企業で行われ、「データ活用の民主化」という言葉のもと、多くの従業員にデータを自由に利用できる環境を整備して提供されています。
そうした自由度を上げる動きに対し、データマネジメントは管理を重んじる活動になります。それは、企業の資産であるデータを適切に利用して管理することで、不適切な利用を防いだり、情報漏洩を防いだり、データ活用を極力正確に行えるように補足情報を提供する動きです。また、監視・統制・ガバナンスを重視した活動となります。
場合によっては、データ活用を推進する組織と対立し、落としどころを見つけなければならない場面も登場すると思われます。守るべき企業の資産であるデータを守る最後の砦として、守るべきルールは守る、ことを繰り返し社内に普及することが求められます。 
ルールを厳格に守るために、融通が利かない、などと評価されることもあるかもしれませんが、データを管理する場面においてはその厳格さが必要になります。 
また、データに精通している人は、実は組織内に既に存在することも多くあります。
あるシステムを利用する時に、困ったら相談する相手がいませんか?
その人は特定の業務や特定のシステムに詳しく、さらにそのシステムや業務で扱われているデータにも精通しているはずです。ご自身は「データに精通している」と思っていなくても、業務上で扱われている情報に精通していることは、データに精通している状態に非常に近しい状態です。

「データ活用は実行しているけれど、そろそろ統制を取らないといけない時期に来ている」と感じられたら、社内のデータマネジメントに求められる人材像に合致する人を探してみてください。そういった方に厳格にデータを管理してもらうことで、安心安全なデータ活用の環境整備が出来上がることが期待されます。 

4. まとめ

今までお話しした内容をまとめます。

まとめ

1.データマネジメントとは 
  企業の第四の資産を管理すること 
2.実現するためにするべきこと 
  企業のデータにまつわる課題から目指す姿を描く 
  データ活用:データにアクセスでき、活用したいデータを探索できる環境を用意 
        データカタログやデータ要件を明らかにする 
  データ収集:データの流通経路を可能な限り一つにする 
  データ生成:データの構造を統一化する 
         データ品質を意識した登録が行える 
3.求められる人材像 
  データに精通しており且つ正確にルールを守って実行ができる人物 

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