人材不足はなぜ起こるのか?
現状の課題と対策について
「やるべき仕事が山積みで、いつも時間に追われている。」「人材さえいれば、受注できる仕事はあるのだが…」など、現在、多くの企業が人材不足に頭を悩ませています。
特に、中小・小規模企業では、人材不足が起こりやすいと言われていますが、その要因は様々です。
人材に関する課題について、現在の状況を再確認し、今後の予測も踏まえた解決策を整理していきたいと思います。
目次
1. 中小企業における人材不足の状況
2. 中小企業における人材不足の理由
3. 人材不足の解決策
4. まとめ
1. 中小企業における人材不足の状況
中小企業庁の「第165回中小企業景況調査」によれば、2021年7-9月期において、従業員数(臨時・パート等を含む)が「不足」しているとする中小企業は、全体の18.9%となっており、5社に1社が人手不足を実感しています。
この数値は、新型コロナウイルス感染症の拡大前である2019年の同時期には25.1%でした。現在は、感染症による経営状況の悪化等の影響があり、また、先行きの不透明感から新規採用を見合わせている企業も一定数あると思われます。しかし、今後、感染者数の減少傾向が続き、景気の回復に繋がれば、人材を確保しようという動きが増えることも予想されます。
出典:「第165回中小企業景況調査 資料編」(中小企業庁)
(https://www.smrj.go.jp/research_case/research/survey/frr94k0000000hs7-att/shiryo_165th_1.pdf)
「第157回中小企業景況調査 資料編」(中小企業庁)
(https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/keikyo/157keikyo/157shiryou.pdf)
2. 中小企業における人材不足の理由
上記のような状況下で、中小企業での人材が不足してしまうのには、中小企業特有の理由があると言われています。新型コロナウイルス感染拡大後の状況も踏まえて整理したいと思います。
求人を出しても応募が少ない
厚生労働省の「一般職業紹介状況」によれば、2021年9月の有効求人倍率は1.16倍となっており、コロナ禍前の水準である1.5倍前後から比べると、低くなっています。しかし、アフターコロナでは、この数値がコロナ禍前の数値に近づくことも予想されます。
また、大企業と比較すると、企業の求人倍率は高い傾向にあります。大企業と比べて知名度の低いことや、給与・待遇面での優位性がないことなどから、「求人を出しても中々応募が来ない」といった状態です。
出典:「一般職業紹介状況(令和3年9月分)」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/000847314.pdf
さらに、コロナ禍における変化として、求職者側がより感染症の拡大等の影響を受けにくい業界を好むなど、憂慮すべき課題もあります。生活様式や価値観の変化から、勤務地、労働時間、ワークスタイルの柔軟性等、就職・転職先に求める条件も変化してきているようです。コロナ禍の影響を踏まえ、収益性の向上や労働環境の整備等、変化に対応できる企業に人気が集中することも起こると見られます。
元より限られた予算での採用活動で、人材の確保が困難であったものが、さらに厳しい状況にあると言ってよいでしょう。
社内での人材育成に時間をかけられない
中小企業では、慢性的な人手不足から、従業員一人ひとりにかかる業務負担は大きく、業務の範囲も広くなりがちです。
その為、採用した人材を育てる時間も十分になく、新入社員や若年層の中途社員を採用するのも困難になります。しかし、専門知識が必要な分野であればあるほど経験者採用は難しく、袋小路に入ってしまう企業も少なくありません。
また、コロナ禍では、通常業務に加えて、感染拡大防止に関わる様々な対応が求められ、一層時間に追われることとなったり、時間差勤務や在宅勤務で人材育成の機会そのものが減ったりするなどの影響もあります。
3. 人材不足の解決策
こうした人材不足を解消していくにはどうしたら良いのか?3つの観点(社内の業務を見直す、人材育成体制に工夫をする、間口を広げる)から考えてみたいと思います。
社内の業務を見直す:業務プロセスの改善
前述の通り、中小企業では一人ひとりの従業員にかかる業務負荷が高い状況があります。
まず、その状況を改善することによって、余剰時間を捻出し、現状を打破するために時間を使うことが必要です。
業務プロセスの改善は、以下の手順で進めます。
1) 現状把握
現在行っている業務の中で、時間がかかる作業ややりにくい作業(ボトルネック)について、何をどのように行っているかを確認します。事務処理作業であれば、〇〇のデータがメールで届き、そのデータを担当者1名で取りまとめて報告書を作成するのに何時間かかる、
というようなことです。
ここで注意しなければならないことは、担当者がやり慣れた業務であればあるほど、ボトルネックとなっていることに気づきにくいという点です。その為、上司や他の担当者等他者の目線で業務を見直すことが必要です。
2) 改善策の検討
ボトルネックとなっている作業の全部、または一部を外部委託ができないか、デジタルツール等の導入で人の仕事を自動化できないかなどを検討します。
昨今、デジタルツールは様々なものが提供されていますが、機能や価格面に加えて、自社の業務、システムとの親和性やツールの使い
やすさも十分に考慮して検討したいところです。一定期間無料で使用できるものもありますので、活用しながら検討することをおすすめ
します。
3) 改善策の評価
2)で検討した改善策のコストと削減できる人件費の比較等から改善策の評価をします。
既に馴染んでしまっている今のやり方を変えたくない、新しい仕組みを導入すると余計に手間がかかる、という意見が出ることとは思いますが、携帯電話が便利なスマートフォンに進化したように、業務効率改善の方法やツールも進化しています。先入観を取り払って、一度現状把握から取り組んでみることをお勧めします 。
一度に大きく変えるのではなく、まずは、比較的変更がしやすく効果がわかりやすい小さな業務改善から始めるなど、進め方にも一工夫が必要です。
人材育成体制に工夫をする:社内教育方法の見直し
Aさんの担当業務は本人にしかわからない、というように仕事が属人化している場合、担当者が不在の場合その仕事が進まない、離職者が出た時にノウハウが引き継がれていないなど、業務を進める上でムダな時間が生じてしまいます。
また、専門的な知識を習得するには時間がかかりますが、OJT(オンザジョブトレーニング)での教え方に個人差があったり、業務に
追われ継続して教育することが出来なかったりすると、教育対象者にとっては大きな時間のロスやモチベ―ションの低下に繋がります。
教育の方法には、OJT、社内教育、外部機関教育 の受講等がありますが、まずは、PC操作等の共通知識と社内の業務知識について、教育の「型」を作り、それをいつでもアクセスできる形にすることが重要です。
教育の「型」としては、業務マニュアル等の整備・共有が挙げられますが、eラーニングシステムを活用することも有効です。社内でOJTを行う際や、集合教育を実施するタイミングでその様子を録画し、従業員がいつでも見られるようにしておくだけで 、その後の教育の
手間が省けます。また、教える人ごとに違った部分が生じるということも避けられます。
教育した結果、その知識を従業員が理解してくれているか、体得しているかを測定することも重要です。効果測定としての手法には様々
ありますが、ゲーミフィケーション(ビジネスにゲームの要素を取り込んで実行すること)を取り入れることもお勧めです。そこで利用
するテスト問題や課題の提示 も、比較的簡単に作成できます。Google formなど無償で利用できるものもあります。
https://www.google.com/intl/ja/forms/about/
間口を広げる:人材像、職場環境の見直し
専門知識が必要な職種となると、その業務の経験者の採用を一番に考えます。また、社内の人材と近い人材像のイメージを抱くことが多くなります。
しかし、前述したように、そういった人材の確保は難しい状況にあります。
そこで、そういった人材像をリセットしてみます。その業務の経験がなくても、違う業務の経験が生かせることもあります。例えば、前職が事務職の場合、社内外で多くの人と関わり、コミュニケーション能力がある人材の場合は、営業職としても活躍できる、など、職種や
業種に囚われず、その人の能力を何に生かせるかという視点が必要です。
女性や高齢者の採用を検討するのも良いと思います 。
また 、物理的な制約の見直しとして、就業時間や就業場所等、働き方に柔軟性を持たせることで、条件に合わなかった求職者にとって、応募の候補に上がってくる、ということもあります。
上記のような見直しを行った上で、その内容を採用ページ等でアピールするのも効果的です。
4. まとめ
まとめ
これまで述べてきた事柄について、まとめると以下の通りになります。
<背景>
・日本では、少子高齢化による労働の担い手減少で人材不足が進む。
・ポストコロナで再び人材不足に陥ることもある
<理由>
・求人を出しても応募が少ない
・社内での人材育成に時間をかけられない
<解決策>
・業務プロセスの改善
・社内教育方法の見直し
・人材像、職場環境の見直し
まずは小さな1歩でもできることから始め、それを徐々に拡大していくことで、大きな効果が得られると思います。
解決策に出てきたITツールの選定、eラーニングの仕組み作り、採用ページの作成 等で、当社がお手伝いできることもあります。なるべくコストをかけずに、中小企業の皆様が課題を解決できるような方法を一緒に考える、というのが、当社の方針です。まずは、気軽にお問い合わせください。